「起・承・転・結」って何?

今回の話は、初級者に向きではなく
中級以上の対象者です。
一年前に初稿ができてから
加筆・修正を何度もしまして、
完全にできたかどうかわかりません。
■水墨画簡単? 「起・承・転・結」の由来
起・承・転・結(発音、きしょうてんけつ)とは、
もともと中国において4行から成る漢詩絶句の構成を
指しています。
下の漢詩に注目してください。
その形は、1行目から順に起の句、
承の句、轉(転)の句、結の句と呼んでいます。
結の句の「結」は、「合」とも言います。
漢詩の世界では
「起承轉結」や「起承轉合」と呼んでいます。
漢詩より多くの場合、「起承転結」は
文章の構成において一つの方法として
用いられています。

(↑イラストは作者@自筆)
■水墨画 漢詩構成法からの転用
漢詩の絶句は、
少ない文字数を用いたテクニックで相手に効率的に伝えます。
「起承転結」で構成された絶句が
日本にも伝わりました。

しかし文章やストーリーの構成に
起承転結を用いることは、
論理的ではないとも指摘され、
国際的には一般的ではないといいます。
すなわち、国際的には、
英語の一般的な論理的文章では
パラグラフライティングが
主に用いられており、
学術論文の場合、
読者の理解度を向上させるためIMRAD(イムラッド)と
呼ばれる形式で研究論文を書くのが
望ましいとされています。
パラグラフライティングとは
1つの話題について書かれたパラグラフを組み合わせて、
論理を展 開していく文章技法のことです。

中国の画家潘天寿(故人)が示した「起承転結」。
次の説明を読まずに「起承転結」を当てよう
パラグラフライティングはこれまで
中国の詩文・戯曲などに
多く使われてきました。
■水墨画 簡単に理解する「起承転結」
パラグラフライティング は展開の構造のことで、
「起承転結」とは違って
主張→根拠→主張という構造になっております。
パラグラフはつまり段落のことで、
パラグラフライティングはその段落を
論理的に構成するためのスキルでもあります。
簡単に言いますと一つのパラグラフ(段落)で一つの主張を説明し、
複数のパラグラフを論理的に展開していく手法です。
これは論理的で伝わる文章の書き方ですね。
しかし文章や論文の世界になりますと、
このパラグラフライティングやIMRAD(イムラッド)が
正しい構成法かも知れませんが、
小説やその他のジャンルになると
一概に言えない気もします。
下の図で示された番号順で
「起承転結」を考えてみましょう。

番号で「起承転結」を当ててみよう、
気付くことがあるはずです。
番号は潘天寿(故人)が示したもので、
分かりやすく山水画の例を出していますが
同様の考えは花鳥画にもあります。

さて、「起承転結」をここで確認すると
起→ 興味を引いた話題を見せます。
どのようなスタートなのか注目。
承→ 起の内容を深掘りして、その方向へ説明。
転→ 「転」は継承から変化へとも言え、
ストーリーにアクセントをつけ、
緊張もたかまる。
ここで伏線を敷いているところ。
水墨画の濃淡や疎密、主次などの関係が画中に表します。
これらはリズムが作られ
画面に変化が作られます。
クライマックスになると考えている人も少なくありません。
結(合)→ 結果の登場。
結末で、落款・印鑑も含まれます。
結局、「起承転結」は構図法に深い関係があり
構図法に集約すると言っても過言ではありません。
■「起承転結」がなければ
前述のように
実際、「起承轉合」は中国において
漢詩や、文章の世界に限らず、
絵画の世界においても同じ考えられています。
それは絵画(中国絵画、水墨画)においては
「起承轉合」よりも「開合」という表現が
多く用いられています。
ストレートを避けるために、
物語作成を構成しているわけです。
実際、西洋絵画も中国絵画・水墨画とも似たような考えで
美術史の本や論文を読むと、
ストーリー性が作品に潜んでいます。
水墨画の世界において、
人物画はもちろんのことですが、
山水画や花鳥画はストーリーよりも
「迂回転回」が多く、
言うまでもないですが単刀直入だと面白味がないからです。
「含蓄」ということばがあります。
人間は思ったことをストレートに話さないことから、
相手は吟味するわけです。
それと同じことです。
絵画においてもストレートな構図は
好まれない傾向があります。

潘天壽「八哥岩石図」
■水墨画 有名画家は構図法にも精通している
水墨画において、大抵有名な画家は
その作品の構図も素晴らしく、
構図法に精通しているに違いない。
「起承転結」は山水画に限らず、
花鳥画にも多く使われています。
ここでまた潘天壽自身が描いた「八哥岩石図」を例に
挙げて説明したいです。
私の説明をご覧になる前に
ご自身で「起承転結」はそれぞれどこなのか
考えてみてほしいです。
それができたら、
きっとあなたもこれからいい絵が
描けるに違いありません。
この「八哥岩石図」では、
右下の芭蕉から「起」、
巨大な岩が「承」になり
「転」となるのは八哥(はっか鳥)、
八哥鳥はムクドリ科の鳥で全長27センチくらい。
全体に黒色で、
翼に白斑があり、
額に冠羽をもちます。

潘天壽「八哥岩石図」(部分)
全体に黒色で、
翼に白斑があり、
額に冠羽をもちます。
「転」となるのは八哥(はっか鳥)、
意外でしたか?
最後の「結」とは、
画面中央の芭蕉の葉です。
これも意外でした?
彼は「文章構成の奥義」のような本を読んでいなくても
「呼応関係」を良く知っていることが分かります。
■「起承転結」を知らずに水墨画を描く人
「起承転結」を知らずに水墨画を描く人が
少ながらずいます。
そういう作品は大抵つまらないです。
一例をあげると
画面の真ん中に左右対称の図案のように
描いたりする水墨画。
構図だけで見ても貧弱で何の変化もなく(変化に乏しい)、
まるで案内されている謎の部屋に入る途端、
出口がすぐ目の当たり。
期待していた展開によるわくわくは起きませんでした。
作品について振り返ってみる気もなく、
あなたならきっと失望してしまうでしょうね。
もう少し中国絵画、水墨画について言いますと、
そのような画面の真ん中からスタートして
展開がないまま終わる絵の構成は絶対しません。
展開はなぜ重要なのか言わなくても
もうお分かりだと思います。
■水墨画簡単!「起承転結」は濃淡、虚実でも作られます!

虚・実関係で立体感を作る水墨画
短絡的な説明になるかもしれませんが
虚は虚像、実は実像のことです。
虚実関係、疎密関係のみならず、
濃淡関係も同じことが言えます。
図版を参照してください。

この絵の虚実・濃淡などについて
考えてみてください。
答えはこちらです。

よく勘違いするのは、
ストーリー性って人物画や歴史画に多いこと。
もちろん人物画に限りません。
水墨画の展開の手段として、
よく見られるのは均一を避けるための
色のアクセントであったりや、
運筆の強弱もあったりしています。
点景や、リズムのある表現などすべでストーリー
構成するものになります。
当然、クライマックスがあります。
しかも素人には「意外でした」ものです。
■まとめ
今回は漢詩・文章に由来する「起承転結」を
絵画・水墨画の世界にも使われたことや、
パラグラフの見方と水墨画の違いを
説明しましました。
「起・承・転・結」がなければどうなるのか
もうお分かりかと思います。
むろんすべての絵画を「起・承・転・結」に
当てはまると無理があるでしょ。
作品の趣旨によって
「起・承」は一つなり
「転・結」も一つなったりして、
水墨画の濃淡や疎密、
主次などその展開にあたったりします。
具体的に見ていくべきです。





